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部屋に戻り、壁に向かって座り込み考えた。
タクとミクと三人で暮らしていた頃を思い出して。
あの頃私は、家庭が地獄に思えていた。
愛せないタクとミクに囲まれ、与えられる暴力と与える暴力に苦しんだから。
この家庭には「愛」なんて無いと思っていた。
でも、違った。
愛はあった。
タクの暴力は歪んだ愛情の表れであった。
そして、ミクは――ただ、純粋に私を母親として、愛してくれたんだ。
こんな、母親失格……いや、人間失格の私を。
私が理不尽に暴力を与えてしまっても、小さな体で耐え、そして……愛してくれた。
声を掛けた、ご飯を与えた、身体を洗った……そんな当たり前な事をしただけで、ミクは喜んでくれて、私を……愛してくれたんだ。
凄く、純粋な愛で。
裏切りすぎていた私。
「タクの暴力で心が麻痺していたから」
そんな言い訳は通用するはずが無い。
こんな私に与えてくれた愛情を、最悪な形で裏切ってしまったのだから。
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