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騒ぎを聞きつけ、刑務官が来て私は手当てを受けた。
脳には異常はないだろうが、血を流したから。
一体、どれ位の脳細胞が死んだんだろう。
「何故、あんな事をしたの?」
手当てを終えた刑務官は眉を八の字にして訊いてきた。
私はたった今貼ってもらった額のガーゼを何気なく触り、黙った。
「罪を感じたの……?」
ドキッとした。
多分、そうだろう。
何故、今更罪に気付いたんだろう。
遅すぎるよ。
もっと早く、虐待の罪に、悲しさに気付いていたら、ミクは無事でいただろうに。
「すみませんでした」
私はただ、俯いたまま謝るしか出来なかった。そっと見た刑務官は悲しげな顔をして、頷いてくれた。
この刑務官の加藤さんは親切な人で、この刑務所で唯一心を許せる人だ。ここに来たばかりの私に親切にしてくれた人だから。
ここに来るまでは、刑務官って囚人には必要最低限の事以外は話したりせず、人情味は無く厳しい人だと思っていた。
……勝手な思い込みだったけど。
加藤さんは、優しく頭を撫でてくれた。その手の温もりに、私は涙が出た。
「あら、痛かった?」
驚いて手を離した加藤さん。違う。嬉しかったんだ。頭を撫でてもらった事が。……本当は頭部が切れてないか見ただけみたいだが。
どうしてミクの頭を撫でてあげれなかったんだろう。サトミさんがミクの頭を撫でた時、凄く嬉しそうな顔をしたミク。
私も沢山撫でてあげればよかった。
あの柔らかな髪をくしゃくしゃにして。
今になって、今までしてきた事の後悔が、勢い良く私の心を襲った。
遅すぎる。
遅すぎる。
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