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怪我も大したことがなく、雑居房に戻った。
部屋に入ると、同室の受刑者が一気に私に視線を向ける。いきなり頭を打ち付けた私を見る目は、怪訝に満ちてる様に感じた。
冷たい視線を浴びながら、いつもの様に部屋の奥に座った。体育座りで顔を埋めて。見えるのは薄汚れた床。
部屋は私が入ると会話が止まり静かになった。
ああ、いつも以上に居心地が悪い。沈黙より嫌味の一つ言われてる方が気が楽かもしれないわね。
……。
「……さっきは……お騒がせしてすみませんでした」
私は顔を上げ、コッチに向けられる目を見ながら謝った。
いきなりあんな事をして皆を驚かせたのだし、迷惑を掛けたからってのと、沈黙が辛かったから。
皆の表情に驚きが見えた。謝ってくるとは思わなかったのだろう。
私は此処に来て、全然会話はしなかったけど迷惑を掛けた時位は謝るわよ。
「頭大丈夫なの?」
冷たく言い放ったのは、よく嫌がらせをしてきた92番の千鶴。
『頭大丈夫なの?』……それは、頭の怪我って意味?違う意味?
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