アヤサ  面会

29/32
前へ
/1109ページ
次へ
 私は返答に迷った。   頭の怪我は大したことないし、こんな風に考える事も出来るんだから脳だって異常はないだろう。   でも……罪に苛まれている今、自分のやってきた事を思うと「頭は大丈夫」とは言えない。   虐待加害者の自分を「大丈夫」だなんて言えない。異常だった。  娘にあんな酷い事をしてきて、異常だった。 「娘にやった事を自分にもやったの?」  そう、冷静に問い掛けてきたのは、私が頭を打っている時、止めに入った絵理子さん。   私は暫く考え、コクリと頷いた。  「何故?」  その、再びの問いに、私は何も答えられず、俯いてしまった。   私自身、何故あんな行動をしたのか理由が解らないから。   罪の意識がさせた衝動的行動だろうけど。   黙り込む私を見ながら絵理子さんは更に問う。  「頭を打って死のうとしたの?自殺しようとしたの?」 「……」  自殺……。この雑居房には刃物なんて当然置いてないし、首を吊れそうな物も無い。   だからって、頭を打ち付けて自殺を図ったのではないかと思われたらしい。  「……死にたくなったと言っても嘘ではないと思う。  頭を打ちながら、こんな頭砕けてしまえばいいと思ったし……」 「虐待したからそう思うの?」  絵理子さんから次々出される問い。私はその最後の問いに頷いた。
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加