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私は返答に迷った。
頭の怪我は大したことないし、こんな風に考える事も出来るんだから脳だって異常はないだろう。
でも……罪に苛まれている今、自分のやってきた事を思うと「頭は大丈夫」とは言えない。
虐待加害者の自分を「大丈夫」だなんて言えない。異常だった。
娘にあんな酷い事をしてきて、異常だった。
「娘にやった事を自分にもやったの?」
そう、冷静に問い掛けてきたのは、私が頭を打っている時、止めに入った絵理子さん。
私は暫く考え、コクリと頷いた。
「何故?」
その、再びの問いに、私は何も答えられず、俯いてしまった。
私自身、何故あんな行動をしたのか理由が解らないから。
罪の意識がさせた衝動的行動だろうけど。
黙り込む私を見ながら絵理子さんは更に問う。
「頭を打って死のうとしたの?自殺しようとしたの?」
「……」
自殺……。この雑居房には刃物なんて当然置いてないし、首を吊れそうな物も無い。
だからって、頭を打ち付けて自殺を図ったのではないかと思われたらしい。
「……死にたくなったと言っても嘘ではないと思う。
頭を打ちながら、こんな頭砕けてしまえばいいと思ったし……」
「虐待したからそう思うの?」
絵理子さんから次々出される問い。私はその最後の問いに頷いた。
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