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「罪から逃げるために死にたいと思ってるんでしょ?」
そう言った絵理子さんは、睨むかのようなキツい目付きになった。
『罪から逃げる』確かに。
私は「虐待」の罪に気付いた今、この罪から逃げたいのかもしれない。
でも、罪からは逃げれない。
だから死によって罪を償いたい。自らを死刑にして、虐待の償いをしたいのかもしれない。
「私なんか……生きる価値なんてない。どうせ貴方達だってそう思っているでしょ?
虐待なんかする奴は死刑になればいい、そう思っている奴は沢山いる。やってしまった罪は消えないんだから、私が消えればいい。死んでしまえばいいんだ」
そう……私は「死にたい」んだ。
だって……娘を、この手で沢山傷つけた。
最後には殺しそうになった。
こんな手、いらない。
酷い言葉を吐き続けた、この口も、いらない。
ミクを憎んだ、この心も、ミクを悲しませ続けた、自分の存在が、いらない。
いらない。
死んでしまいたい。
「死んでしまいたい……」
そう呟いた。
「ま、分かるけど、その気持ち」
絵理子さんが言った。
そして、語る。
「私も、夫を殺してしまった時はパニくった。娘に手を上げる夫から娘を助けるのに、無我夢中で……気付けば、殺しちゃってたのよ。
今思えば、殴られて泣き叫ぶ娘を見て――キレたんだと思う。
娘を助ける為とは言え、殺しちゃった。
私が夫を殺してしまったと気付いた時――もの凄い早さで色んな事を考えた。
私が殺人者になってしまった、世間からは白い目で見られる。私だけじゃない、私の家族だって……。
正直に言うとね、私、夫の死体を隠そうとしたの。でも、隠す場所も思いつかず、ただ狼狽えて……」
絵理子さんは切々に、自分の殺人に至った経緯を語る。時に、苦しそうな表情になりながら。
皆、黙って絵理子さんの話を聞いてる。
「私には、殺人の罪は荷が重すぎた。まぁ、大抵の人がそう思うでしょうけど。
それでね、私……夫を殺してしまって、その事も隠せそうにないって思った時……死のうと思った。
だから、アンタが死にたいって思うのも、分かるのよ」
絵理子さんも罪に苦しんだと聞いて、ズキンと胸が傷んだ。
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