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「私はさ、詐欺をして捕まったんだ。ジーサンバーサンを騙してな。簡単に騙されるから、簡単に金が入った。普通に働くのが馬鹿らしくなった。今にして思ったらこの考えこそ大馬鹿だけど。
気付けば何十人も騙してた。詐欺で得た金は、大学に進学する息子や、娘の結婚資金に使おうとした。
馬鹿だよ。娘息子の為と言っても、人を騙して得た金さ。詐欺はバレて私は逮捕された。娘は会社をクビになったし婚約者とも別れる事になってしまった。息子だって大学どころじゃなくなったさ。
結局私は自分の子供の人生を狂わせてしまった。旦那には離婚されるし、子供等も面会に来てくれない。縁を切られたかもね。
でも私は釈放されたら子供等に真っ先に会いに行くさ。
会ってくれないかもしれない。それでも私は子供等に償うさ。今度はまともに働いて、迷惑掛けた分償っていくさ」
「騙された被害者にも償いなさいよ」
そう言われて「そうだったな」と言った千鶴に皆が呆れる。
千鶴も、これからは償って生きていくんだ。
私だって償いたい。
でも……。
「私はどうやったら償えるか分からない……」
分からないんだよ。
「それは自分で考えな。アンタ母親だろ」
そう千鶴に言われた。
こんな私でも、母親なんだ。
「娘にすまないって思っているんだろ?後悔してるんだろ?
だったら償えるさ。だから頑張りな」
意外な言葉をあの千鶴から貰った。
素直に嬉しかった。
嫌いだった千鶴に、今は感謝の気持ちで一杯になる。
「あり……がとう」
涙声になりながら言った。
「アンタの為にいったんじゃねーよ。アンタの娘の為だよ」
そうぶっきらぼうに言う千鶴。
それでも……嬉しかった。
そして、これからは償いに生きると決めた。
償いきれるかはわからない。
どうすれば虐待の罪を償えばいいか、今は分からない。
でも……償いたい。
だから……償うんだ。
償うんだ。
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