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事件以来会っていないと聞いて、虐待をしてしまったアヤサさんには顔を合わせたくないのだと思った。たとえ娘であっても。
それを聞いて、何て言ったらいいか……言葉が浮かばない。
安易に「娘なのだから面会に行った方が良いですよ」なんて言えない。それこそ余計なお節介だし。
私がつい困惑した表情になってしまったからか、アヤサさんのお母さんは、笑顔になりながら「こんな事言われても困るわよね、ごめんなさいね」と言ってくれた。
笑顔といっても明らかな作り笑いを浮かべた顔。その表情は逆に悲しい。
「あの、別にアヤサに会いたくない訳ではないの……。本当は、会いたいけど、中々会いに行けないのよ……」
悲しげな作り笑顔のままそう話すのを聞いて、取り敢えず会いたくない訳ではない事に内心ホッとしてしまった。
そして、会いに行けない理由も聞いた。
旦那さん……つまり、アヤサさんの父親が運転事故を起こしてしまった事。不幸中の幸いと言って良いのか、死者はいなく怪我人は旦那さんだけで済んだけど、車は廃車になり、事故で壊してしまった物の弁償などで新しい車は当分買えそうになく、今は車が無いから遠出が難しいと、「恥ずかしい話しだけど……」と言って話してくれた。
そして、事故でかなりショックを受けていた旦那さんは、アヤサさんの……娘の虐待とそれによる逮捕を知らされ、ショックの余り倒れてしまい現在入院中、旦那さんの看病もあると知らされた。
そして、同居する姑は認知症で、施設は人が満員で入居出来ないから今はディサービスを利用してるとも。
今は姑の介護で仕事にも行けず、内職をしながらディサービスの日にお見舞いに行っている。刑務所は遠いから中々面会に行けないと話してくれた。
確かに、そんな状況だとアヤサさんの面会には行けないわよね……。
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