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面会に行くのは難しい状況なのは分かった。
でも、会いたいと思っているなら面会に行ってほしい。
他人事だけどそう思ってしまう。
アヤサさんだって母親に会いたい筈だから。
会わせてあげたいって言い方をしたら烏滸がましいかもしれないけど、何か私に出来る事はないか考えた。
何か――
「……あの、サトミさん?」
考え込んでしまっていた私を、不思議そうな顔をしながら呼ぶアヤサさんのお母さん。
「あっ、す、すみませんっ!」
何度か声を掛けられていたみたいだから私は慌てて謝り、深く考え込んでしまって声が聞こえなかったみたい。
「お婆ちゃんが帰って来るから、そろそろ帰らなくてはいけないの、ごめんなさい。ミクの家族の私が先に帰って……」
お婆ちゃん……?あ、アヤサさんのお婆ちゃんか。
そっか……。姑さんがデイサービスから帰ってくる前に帰らなきゃならないのよね。
申し訳なさそうな顔をされたから、コッチは笑顔で「気にしないで下さい」と言った。
私は専業主婦だから時間がある。そりゃ家事があるから全く自由な身という訳ではないけど、何とか時間を見つけてお見舞いに来ているアヤサさんのお母さんとは状況が全然違う。
それに、私は私の意志でお見舞いに来てる。私が勝手にやっている事なんだから、気にしなくてもいいのよ。
だから「気にしないで下さい」と言ったのは社交辞令とかそんなのじゃなく、本心。
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