サトミ  見舞い

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 私が話し終えると、少しの間を置いて朋代さんが答えてくれた。 「お気持ちは嬉しいけど、今日話した通り、アヤサの面会には中々行けないのよ。刑務所が遠いから、行くだけで車でも結構時間が掛かるでしょ?  それを往復したら、デイサービスからお婆ちゃんが帰ってくるまでには帰れないの。  ごめんなさい、折角誘ってくれたのにね」  その声はミクちゃんのお見舞いの時に話した時と同じ、優しい声。そして声まで申し訳なさそう。  私のお節介を怒りはしてないみたいだが、気を使わせてしまったみたいでこっちが申し訳ない。 「いえ、こちらこそそちらの都合も考えずいきなりごめんなさい、あの……お節介だと充分承知なのですが、お婆さんを私の旦那が相手させてくれませんか?  朋代さんとお婆さんさえ承諾してくださば……」  そう、私がトモヤにお願いしたのは、アヤサさんのお婆さんの相手。  会ったことも無い他人、しかも、相手は認知症なのに。  認知症……。私は介護経験が無いから、その相手がどれだけ大変か解らない。その癖いきなりトモヤに相手を頼んだ。 「えっ?」  やはり、朋代さんも電話の向こうで驚いていた。
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