25567人が本棚に入れています
本棚に追加
トモヤは、この無茶なお願いをした時、朋代さん、そして一番にお婆さんの気持ちを優先して、向こうが承諾した場合に相手を引き受けると言った。
相手が認知症だろうと、人としての尊厳を侵害する事はしてはならない、だから、赤の他人のトモヤをお婆さんが受け入れられないのなら、相手は出来ないとも。
そして、一言に「認知症」といっても症状は人それぞれだから、なるべくその症状も知りたいと。
勿論、向こうに差し支えが無ければ。
介護は一人では大変だから周りの協力が必要だと思うから、その協力者になれるならなりたいと言ってくれた。
最初に「もし迷惑でないのなら」と言ってから、トモヤの言葉を伝えた。
「こちらこそ……本当にいいのですか?面会に連れていってくれるだけでも悪いのに、旦那さんにお婆さんの相手までさせて」
「はい、私……こんな事思うのはお節介だと充分承知してるのですが、アヤサさんと朋代さん、面会して会ってほしいのです」
「私も、アヤサには会いたいとずっと思ってたのよ……
ありがとう」
『ありがとう』と言ってもらえたのが嬉しいと同時に後ろめたかった。
私は刑務所まで車で行くだけ。お婆さんの相手を頼まれるトモヤの方が大変なのは簡単に予測できるし、アヤサさんと朋代さんを会わせたいという勝手な思いを相手に押し付けただけ……。お礼を言われる様な人間じゃない。
昔言われた友人の言葉は警告と受け止めたが、私の「お節介」が本当に相手に為になっているか……単なる私の余計なお世話になってないか、心配だ。
トモヤまで巻き込んで、話しを進めながら何を考えているんだろう私……。
トモヤに……ううん、朋代さんにもお婆さんにも申し訳ない。
視界に映るトモヤは、対面しているソファーでくつろぎながら新聞を読んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!