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トモヤの案内のお陰で八時半に到着した。
広い庭が真っ先に目に入る綺麗な家。マンション暮らしだと庭がある家庭が羨ましく思える。庭があったら野菜菜園とかやりたいなぁ。
そんな事を考えながら表札を確認。「小堺」の文字を見てこの家で間違えじゃないことを確かめた。
車は、送迎バスが来ても邪魔にならない場所に停めた。近くの空き地の前。警察に見つからない事を願おう。
そしてトモヤと並んで立ち、インターフォンを鳴らした。
「はーい」
返事をして出てくれたのは朋代さん。
「今日は本当にありがとう……。なんてお礼をいったらいいのか……。
今日一日お世話になるわね。あ、玄関じゃ何だから上がってちょうだい」
そう言われ、家の中に案内された。玄関も綺麗で、掃除が隅までされており靴も綺麗に並んでいる。微かに良い匂いがするのは飾られたポプリからかな?
「あの、初めまして」
トモヤが挨拶する。電話では話したことはあっても顔を合わすのは今日初めてなのよね。
朋代さんは再び、深々とお礼を言ってくれた。
そして客間に案内される。趣味だろうアンティークが飾られた品の良い部屋。壁に飾られている風景画がとても綺麗でつい見とれてしまった。
……ミクちゃんの写真も飾ってあった。今よりずっと幼い頃の。
「お婆ちゃん、今日帰ってからこの方が病院にお見舞いに連れていってくれるのよ」
ドアに向かって大声で朋代さんが言った。お婆さんに話しているのよね。
「あ、お婆ちゃん耳が遠いから話すときは大声でお願いしますね。……色々大変かもしれないけど宜しくお願いしますね。
あっどうぞ適当に座ってちょうだい」
今度は小声。
言われて私達はベージュ色のシンプルなデザインのソファーに腰掛けた。
テーブルにお茶を出してもらうと同時に、年配の女性が客間に入ってきた。
この方がアヤサさんのお婆さんだろう。控えめな色のカーディガンにシャツ、コールテンのボトムスに身を包み、髪を綺麗に纏め、引き締まった表情の顔には薄く化粧をした女性。
こういう言い方は失礼だか、見た感じはしっかりして見え、認知症には見えない。
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