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暫く動けなくて呆然と立ち尽くしてしまった。
「……座ったら?」
優しく問い掛けるように、お母さんが言った。
その声で、自分が立ちっぱなしであった事に気づき、椅子を引いて座った。
カシャンと椅子の音が響いた。
又俯いて前を向けない。
だって、どんな顔をしたらいいの?
ただ、膝の上に乗せた自分の組んだ両手を見詰めた。
……このままじゃダメ。
何か喋らなきゃ。
でも何から話せばいい?
刑務所生活の事?
それより先に謝らなくては。
ミクの事も尋ねるべき?
あれこれ考えては結局何も話せず無情に時は過ぎるばかり。
このままだと無言のまま面会時間が終わってしまう。
折角来てくれたのに話さないまま終わるなんて嫌だし。
せめて、一言謝らなきゃ。
私は前を向き、母親を見た。目が合い、お母さんが少し驚いた顔になる。
「ごめんなさい」
「ごめんね、アヤサ」
声が重なった。
再び目を合わせ、お互いに目を見開く。……お母さん、又驚いた顔をしてるけど、私も同じ様な表情をしているだろう。
何故、お母さんが謝るの?
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