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お母さんは眉間に皺を寄せたまま、暗い表情になった。
そして、さっきとは違う暗いトーンで静かに語ってくれた。
何故、お父さんが来ないのか。
来ないのではなく、来れないのだと知った。
怪我と心労が原因で入院したから。
その心労は私が原因でもある。
そして今まで面会に来れなかったのは認知症になったお婆ちゃんの介護があるからだとも知った。
そして、徘徊をするお婆ちゃんには付き添いが必要だからと、トモヤさんが付き添ってくれて、お婆ちゃんをお父さんのお見舞いに連れていってくれた事も聞いた。
「ミクといい、本当、サトミさんにはお世話になったねぇ……。感謝しきれないよ。何かお礼出来ないかねぇ……」
溜め息混じりに呟く母。
そしてサトミさんを色々褒める。娘の私はこんなに褒められた記憶無いのに。
その様子から、サトミさんを凄く気に入っているのが分かる。
サトミさんみたいな人が娘だったらお母さんは嬉しいだろうねぇ。
こんな犯罪者になり刑務所に居るのか娘なんて悲しいだろうな。
ごめんなさい、お父さん、お母さん。
何度も心の中で謝った。
面会時間が終わり、「じゃあね」と言い残し去る母親。
結局、此処まで運転してくれたサトミさんは来なかった。
サトミさんの事だから、親子の面会に気を使って来なかったんだろうなぁ。
お母さんと面会が出来て、嬉しかったのに、何だか複雑な心境で雑居房に戻った。
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