アヤサ  ミクよ

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 自由時間、いつもみたいに雑居房の隅に座り込む。無意識のうちに手を組んでいた。  癖になってしまったのだろうか。  まぁいい、自由時間は好きなだけ祈れる。  神が存在するとしても、私は見捨てられてるだろうし、神が存在しないとなればそれこそ全く無駄な行為なんだろう。  それでも祈らずにはいられない。  この祈りは誰の為?もしかしたら自己満足の為かもしれない。  ミクの為ではなく自分の為かもしれない。  自分の組んだ手を見て、時々そう思う。 「お前、何してんだよ」  不意にした声が自分に掛けらた声だと知り、そっと視線を上げる。目の前に千鶴がいた。  呆れた様な顔をしている。 「お祈りかい?」  今度は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて言ってきた。組んだ手を見て察したのだろうか?  私はただ、コクンと頷いた。  それを見た千鶴は大袈裟に溜め息を吐いた。 「後悔……してるんだな」  そう言いながら私を見る目は、さっきの意地の悪い笑みではなく真剣な眼差し。  そんな目で見られた私は、今度は頷くだけでなく「はい」と言葉を発した。出たのは空気が漏れたみたいな弱々しい小さな返事。  千鶴は私の前に座り込んだ。
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