アヤサ  ミクよ

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 自分が犯した過ちの後悔は前にも話したが……。  目の前で胡座をかいて座りながら頭をボリボリと掻く千鶴。  今更何なんだかと思い、ただ無言で千鶴の頭を掻く手を見ていた。  刑務所は入浴時間は毎日は無い。まぁ当たり前だろう。夏でも三日に一回のペースの入浴だから、今の千鶴みたいに頭が痒くなる人は多いだろう。  ……私は刑務所に入る前から、水道代を気にして毎日の入浴は出来なかった。ニ、三日に一度シャワーで簡単に済ませていた。  毎日お風呂に入らなきゃ気が済まない綺麗好きには堪らないだろうなぁ。それでもいざ風呂へ入れない状態が続くと慣れるもんだ。  私だって最初はシャワー位毎日浴びたいと思ったが次第に慣れたんだ。  そんなくだらない過去を思い出していると、一緒に風呂場に居たミクの事まで思い出した。脳裏に浮かんだのは痣のあるミクの背中。その背中に、まだ暖かくなっていないシャワーの水を掛け洗った事を思い出した。  痛々しい細い背中に、容赦無いシャワー。粗品で貰った安物タオルでゴシゴシと洗った体。  冷たかっただろう。  痛かっただろう。  なんて残酷な事をしてきたのだろう。  唇を噛み締めた。 つい、組んだままの手にも力が入る。 「まだまだお祈りかい?」  頭を掻くのを止めた千鶴が皮肉っぽく言った。
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