サトミ  ミクちゃん

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 朋代さんは改めて礼を言いながら助手席に座った。 「次は直接病院で良いですか?」 「はい……お願いします」  病院とは、トモヤがお婆ちゃんを連れて行く予定の、アヤサさんの父親が入院してる病院。もう少ししたらデイサービスからお婆ちゃんが帰る時間だ。トモヤも病院に向かう準備をしてるだろうな。  トモヤに電話しようと思ったが、それより早く出発する事を選び、電話は止めて車を走らせた。 「……トモヤさんを困らせないといいけど……」  車内に流れるラジオに混ざり、独り言みたいに呟く声が聞こえた。やはり朋代さんもトモヤ達が心配みたいだ。  私は言葉が見つからず返事が出来なかった。  道路は空いていたが、住宅街に向かうにつれて段々道路も混んできた。  赤信号がもどかしい。  病院に到着したのは三時ちょっと過ぎ、院内に入り急ぎ足で病室に入ると、トモヤとお婆ちゃんは椅子に座りながらそこに居た。  良かった。何もトラブルは無くて。アヤサさんの父親にお話をしているお婆ちゃんの姿を見て私はホッとした。朋代さんも安心したみたい。  デイサービスから帰って来たお婆ちゃんを連れ、すぐ病院に来たというトモヤ達は、少し前に此処に着いたみたいだ。  お婆ちゃんは、全く嫌がる事は無くトモヤが運転する車に乗ったと聞いて又ホッとした。  ベッドの上で上半身を起こし、お婆ちゃんの話に相槌しているアヤサさんの父親にも挨拶した。パッと見た感じ、眉間に刻まれた皺と太く釣り上がり気味の眉、への字口が厳かな雰囲気を醸し出して見せるが、よくみたら優しい目をしている方だ。  朋代さんから私を紹介され、私は頭を下げた。すると相槌を止め、釣り上がってた眉を下げて、私達を見詰める。 「有難う御座いました……そして、本当に……本当に申し訳ありません」  そう言い、頭を深々と下げられた。  そして、身体を小刻みに震わせる。  私とトモヤは慌てて頭を上げる様に言った。
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