サトミ  ミクちゃん

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 ……前にも、朋代さんからアヤサさんの件で何度か謝罪された。  そして今、アヤサさんの父親からも頭を下げられた。  謝らないで。  謝るのは寧ろ私の方なのだから。  虐待に気付き救えなかった私の…………。  虐待の事件は、加害者であるアヤサさん、被害者になってしまったミクちゃん以外にも沢山の人を悲しめた。  沢山の人を……。  この病室に今は他の患者さんはいなく、お婆ちゃん以外が皆複雑な表情になる。  何とも気まずい雰囲気。 「あの、本当に今日はありがとうございました。私達はタクシーで帰りますので、もうお帰りになり休んでください。疲れさせちゃったわよね?」  気を利かせて朋代さんが言ってくれた。  ……もしかしたら家族三人きりになりたいのに私達が居て邪魔なのかもしれない。  「それでは、そうさせてもらいます」と言い、先に帰ろうとしたら、お婆ちゃんが急に立ち上がり、病室から出てしまった。  慌てて朋代さんがお婆ちゃんを連れて来る。それでも又、「お客が来た」と言いながら病室から出ようとするお婆ちゃん。 「お前達も帰った方がいいかもな……」  「そうね……そろそろ帰るわね」  アヤサさんの父親が疲れたように言い、同意した朋代さんも帰る事になった。  朋代さんはいつもこんな感じで、一人で介護してるんだ……。  目を離したら何処か行っちゃうから目が離せないと話してたのを思い出した。  暴れはしないものの、目の当たりにするとやはり大変そうに思えた。 「……トモヤ、送ってもいい?」  小声でトモヤに聞いたら嫌な顔一つせず頷いてくれた。 「あの、よかったら車に乗って行きませんか?送ります」 「いえ……そこまで迷惑掛けれないわ。充分世話になったのにこれ以上は……」 「そんな、気にしないで下さい。序でと言ったら何ですが一緒に帰るんですし送りますよ」 「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわね……。なんだか此処まで親切にしてもらって悪いわね」  ……悪くなんかないのよ。  だって、これは……ミクちゃんを救えなかったせめてもの罪滅ぼしだもの……。
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