サトミ  ミクちゃん

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 朋代さん達を無事家に送った。  ガソリン代としてお金を渡された。断りはしたが、このまま受け取らないとかえって気を使わせて悪いので、受けとった。  別れ際、お婆さんは「兄さんまた来てな」と皺だらけの笑顔で言ってくれた。  トモヤは気に入られたみたい。良かった。  頭を下げる朋代さんと手を大きく振ってくれるお婆さんを後ろに車を走らせた。  運転するトモヤの横顔をチラッと見た。顔立ちも整ってるし、何より人柄が良くトモヤは人に好かれやすいタイプだ。そんな男性を夫にするのは喜ばしい事だが心配はある。  ……浮気の心配。  昔は、トモヤが浮気して浮気相手の女性が妊娠したらって本気で心配してた。  自分が妊娠出来ない負い目からかもしれない。 「やっぱ、介護って大変そうだな」  ネガティブ思考に浸かってた私に、隣からトモヤが声掛けてきた。 「え?あ、うん。そうよね、大変そう」  ネガティブな考えは止め、慌てて返事した。 「ミクちゃんの見舞いに中々行けないのも仕方ないよな……」 「うん……」  それっきり会話は途切れた。車窓から見た空には星が見えた。  溜め息が窓を曇らせ、星は見えなくなった。
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