サトミ  ミクちゃん

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 正午。晴れた空が清々しい。ベランダに立ち洗濯物を干し終える。晴れていても空気は冷たいから指先はヒリヒリと痛む。  部屋に入り冷めた体を温める。家事が一段落着いたし、軽く昼食を済ませたらミクちゃんのお見舞いに行こうかな。  うん、行こう。  そう決めると簡単に昼食を済ませ、出掛ける準備をした。  冷えるから厚手のコートを着込み、部屋を出た。そして戸締まりを終えポケットから出した手袋をする。  運よくこの階で停まってるエレベーターに乗り閉じるのボタンを押す。手袋越しだからボタンを押す感覚が伝わりにくい。  今日は久しぶりのお見舞いだ。……と言っても最後に行ったのは確か、五日前。  朋代さんよりは頻繁にお見舞いに行っているわよね。  朋代さんと一緒にアヤサさんの面会に行って(私はアヤサさんと面会しなかったけど)一週間が経つ。  介護の一部を目の当たりにして、介護の大変さ、朋代さんはお見舞いに行くのは難しい状況というのが分かった。  タクさんが何故お見舞いに行かないのかは分からないが……。  いや、お見舞いの時間がズレて会ってないだけでタクさんがお見舞いに行ってないとは限らないわよね。ボンヤリそんなこと考えながらエレベーターから降り、マンションから出た。吹く風が冷たい。  乱れる髪を抑えながら急ぎ足で車に向かった。
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