サトミ  ミクちゃん

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「こんにちは、あの……」  近付き、又声を掛ける。  すると、今私に気付いたみたいで、顔から手を離し、私を見詰めた。涙が溢れる双眸で。薄化粧の顔は涙により化粧崩れしてる。  背中に嫌な汗が伝う。落ち着きだした鼓動が、再び高鳴りだす。 「あの、……どうしたん……ですか?」  高鳴る心臓。  落ち着け。  思わず強く握った拳の中は汗ばんでいる。 「あ……ミクが……ね……」  そう言って、涙を流す朋代さん。  私は次の言葉を待たずに――いや、次の言葉を待てず、個室に入った。  反射的にだと思う。  すると、何時もはガラリとしてる個室に、看護師さんが数人居た。  今までこの看護師さん達に気づかなかった。  その看護師の白衣が、更に更に鼓動を高めた気がした。 「ミクちゃん!」  此処が病院だという事も忘れ、私は叫んでいた。  そして、振り向いた看護師さんを押し退けミクちゃんのベッドに駆け寄った。
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