アヤサ  現実

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「私、これからどうすれば良いか解らない……」  目の前の千鶴に、そう言った。出たのは小さく弱々しい声。それでも千鶴にはちゃんと聞こえたみたいで、私の言葉に眉間に深い皺を刻む。 「アンタ、償うっていったじゃねーか!今更何吐かすんだ?『償い方が解らない』?ハァ?ふざけんじゃないよ!」  千鶴の怒号で看守が来たので、千鶴は慌てて謝った。一応、私も頭を下げ謝る。得にトラブルは無いと判断した看守は不機嫌な顔で出て行った。  千鶴は私を睨む。いや、千鶴だけじゃない。この狭い雑居房に居る者全て、私に悪意の視線を向ける。  その視線は痛いが、当然と受け止める。  だって、虐待して、娘を殺しかけて、後悔してひたすら回復を祈り、償いたいと言ってた癖に、いざ娘が回復したら…………償い方が解らなくなったのだから。
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