アヤサ  現実

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 償いたい。  その気持ちが変わった訳ではない。  ただ……。私はミクに酷い事をした。悔やんでも悔やみきれない罪。  ミクは小さな身体で一生懸命私なんかを慕ってくれた。私なんかを母親として求めてくれた。  そんなミクの気持ちを裏切って私は暴力を与える一方で愛情を与えなかった。  そんな私が今更何が出来るのだろうか?  ミクを死の危険に追いやった私が再びミクと親子として暮らせるだろうか?  ミクは許せるだろうか?  ミクの気持ちを考えたら……再び一緒に暮らすなんて出来ない。  償いたいという気持ちさえ、母親である私のエゴにしか思えない。  ミクの回復を切に願っていたのに、償いを考えていたのに……それが望みから現実に変わると考えも変わった。  現実とは残酷だね。どんなに罪を償おうとしても、償う事すら儚い夢だと今更気付いた……。
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