アヤサ  現実

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 皆が私を呆れた目で見ている。この冷めた、軽蔑に満ちた目は以前も浴びせられた事があったなぁ。  まだ刑務所(ここ)に来る前で、マンションでタクとミクと暮らしていた頃。  可笑しいな、あんなにも憎くて大嫌いなタクがなんだか懐かしい。  ……二度と会いたくないし、会うことも無いだろうけど。  地獄の毎日と思っていたあの頃。  周りはミクの様子から、私の異常な行動から、虐待に感づいて、私を冷めた目で見ていた。  あの時浴びた視線と今浴びる視線が同じに感じる。  最低な母親に向けられた……ううん、母親と言えない女に向けられる視線。  あの時――ミクと暮らしていた頃に、自分の過ちに気付いていたら、まだ取り返しがついただろうか?  あの頃の自分が自分の行為の――虐待という行為の愚かさ、悲しさ、残酷さに気付いていたら、刑務所になんて入らずに済んだし、親も悲しませなかったし、何よりミクに笑顔が戻っていたかも知れない。  ――でも、今じゃ遅すぎる。  又ミクと暮らしたいなんて、あんな酷い事をした私に許される訳がない。  一緒に居ることなんて、出来ない。
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