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「ちょっと!困ります」
医師を押し退けてミクちゃんの居るベッドに駆け寄った私の肩が即座に掴まれた。露骨に迷惑そうな顔をした若い看護師の手だ。「これから検査があるので」とぶっきらぼうに言い強引に私を個室から追い出した。
「すみませんでした」
つい何も考えず駆け寄ってしまった浅はかな行為を今になり恥ずかしく思い、又申し訳なくて謝った。
それでも私を個室から出した看護師は私を睨んだ後プィと顔を背け、個室に戻った。
そういえばあの看護師さん、無我夢中でミクちゃんに駆け寄った時に強く身体を押してしまった気がする……。
個室の出入口前でつい立ち尽くしていると、ずっと個室の前にいた朋代さんが寄ってきた。
「ごめんなさいね。私が泣いて喋れずにいたから心配させてしまったのよね」
正にその通りだけど私は首を横に振った。
だって……ベッドに寄った時、確かに……目を覚ましたミクちゃんを見れたのだから……。
虚ろな瞳だった。
無表情というか、ボンヤリした顔だった。
ずっと、眠っていたのだから当然よね。
ジワジワと、今になって涙が溢れてきた。
感慨無量。嬉し涙。
ミクちゃんが助かった。
今、段々とそれを実感し、涙流さずにはいれない。
朋代さんも再び涙を流し、軽く私の肩を叩いてくれた。
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