サトミ  愛しい

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 ずっと個室前の廊下に居るのも何だから私達は人気が無い窓辺の待合室に行きベンチに座った。    並んで座ると、涙ですっかり化粧崩れしてしまった顔を私に向けて涙を花柄のハンカチで拭う朋代さん。私の顔も涙で化粧崩れしただろうな……。真似する様に私もバッグからポケットティッシュを取り出し涙を拭いた。  ……涙を拭うのはハンカチの方が上品にみえるなぁ。朋代さんを見るとそう思えた。 「今日、お婆ちゃんがディサービスの日でね……お婆ちゃんを見送った後、お父さんのお見舞いに行こうとした時にね、病院から電話があったのよ。『ミクちゃんが目を覚ました』って……。  最初は実感が無くて、兎に角急いでこの病院にタクシーで向かったの。  今思えばタイミング良かったわよね。お陰で直ぐに来れたのだけど。  タクシーの中でもまだ全然実感無くて……。  病院に着いて、個室に着いた時、何時もはガランとして寂しい室内にお医者さんが数人居るのを見て、入るのを止められた時にやっと実感してね。 『あぁ、ミクがやっと目をさましたんだ』って……。  そしたら急に感情が高ぶってしまって泣いてしまったの。その時にサトミさんが来てね。 『ミクが目を覚ました』って言いたかったのに、伝えたいのに中々言えなくて……泣くしか出来なかった。恥ずかしいわ」  そう話し、はにかんだ朋代さんの表情は少女の様だった。 「私も……個室に強引に入ったりなんかしてごめんなさい」  そう言いと朋代さんは静かに首を横に振ってくれた。 「それだけ真剣にミクの事を心配してくれたんでしょ。ありがとう」  優しい笑みで柔らかな声で感謝の言葉を言われ、私の胸は更に熱くなった。
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