サトミ  愛しい

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 ……ミクちゃんが……喋らない?  それを聞いて、あの事件が起こる前に会ったミクちゃんが、暗い顔をして全然喋ってくれなかった事を思い出した。  元々大人しい子であんまり喋る子ではなかったが、初めは人見知りが激しい子なんだな、て思っていた。  しかし、最後の方には全然話してくれなくて……。  朋代さんは『心因的なものみたいで、一時的かもしれないけど』と言う。  心因的……か。  ショックで喋れなくなる事があるっていうのは聞いた事はある。  でも、どこか遠い世界の事のように思っていた。    ミクちゃんがショックなのは、当然だよね。  あの事件の事、ミクちゃんは何処まで覚えているんだろう。  本来なら守ってくれる筈の母親が、頭を打ち付け……当事者で被害者のミクちゃんは、何処まであの事件の記憶があるの?  頭を打ったショックで、あの事件の記憶だけ綺麗に無くなってれば……なんて祈ったが、そう都合よく行く訳が無く、ミクちゃんの心には、大きな傷を残した。    その心の傷が、ミクちゃんの声を奪った。  ねぇ、ミクちゃん。  又、話せる日が……来るよね。  ううん、無事に目を覚ましてくれただけでも喜ばなきゃ!  朋代さんは近日、ミクちゃんの詳しい容態が解ったらそれを伝えにアヤサさんの面会に行くと話してくれた。その間お婆さんは近くの親戚の人に看てもらうとも。  私は色々とお礼と挨拶をして、再び頭を下げたりなんかもして電話を切った。
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