アヤサ  これから

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「ミクはね、もう電話で聞いて知ってるだろうけど無事目を覚ましたわ。神様にでも感謝しなさい」  ううん、ミクが目覚めたのは心底嬉しいけど、神様よりお母さんに感謝するよ。 「ミクなんだけと、怪我は治りかけてるし、脳にも異常は無いからそれは安心してね。  問題は……『心』よ」  心。  私の暴力は身体以外にも、心を傷付けた。  心の傷を癒すのは、身体の傷を癒すより難しいと聞く。 「ミクはね、あれから一切喋らないの……。身体には異常は無いから、心の問題みたいね」 「喋ら……ない?」  目の前で静かに頷いたお母さんは知らないだろうけど、事件の前からミクは喋らなくなっていた。  私がミクの声を奪った。 「ミクの事はね、タクさんの方にも知らせたわよ。でも、向こうのお父さんがね、『もう関係無い』って言うの……」  あのクソ親父!  米子が実の母親を全く面倒見ないみたいに、タクの家族もミクを見てくれない。  薄情な奴ばかりって……私が言える事ではないけど。 「それでね、ミクのこれからについてだけど……傷の回復も良いし、喋られなくなった事以外は心配は無いから、このまま退院になると思うわ。  その、退院後について、よ」
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