アヤサ  これから

8/16
前へ
/1109ページ
次へ
 言った後、私は俯いた。何度も踏まれた為汚くなった靴が見える。  何も言わないお母さん。沈黙が空気を張り詰める。  そっと顔を上げ、上目遣いで盗み見るようにお母さんを見た。  目尻に皺が増えた目を丸くして、口をパクパクとさせている。何かを言おうとしているが驚きと動揺で、何かを喋ろうとしても言葉が出ないみたい。  酸欠した金魚みたいな口。  声が出ない……ミクと一緒。でもミクは声が出ない以前に……喋ろうとしないんだろうな。  だから今のお母さんみたいに口をパクパクさせたりも……しないだろうな……。 「……ハァ?」  やっと出た声がこの台詞。  そりゃ驚く……わよね。 「養子?聞き間違えじゃない……よね?冗談にしても質が悪いわよ。ふざけるのは止めなさい」  少しだけ落ち付きだしたお母さんが諭すみたいに言う。  私は首を静かに横に降る。 「養子に出すって言った。こんな事今この状態で冗談で言うほど私も無神経ではない」  それを聞くと又目を大きく開く。忙しい目だ。 「ちょっ……何言ってるの?正気?」
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加