25567人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで無理なんて言うの?
今までの分、今度こそ、これから可愛がればいいじゃない」
私も、それが出来るならそうしたいよ。
今度こそ、偽り無くただ、抱きしめてあげたい。
この手にあの子の温もりを感じたい。
頭だって撫でてあげたい。
ううん、撫でてあげたい、じゃない。
お願い、撫でさせて。
この腕に抱かせて。
今更、そんな事ミクにお願い出来る?
……今更……もう、手遅れよ。
母親の信頼なんて私が無くしたし、今ミクが私に抱く感情は……
憎しみや怒り、いや、恐れかもしれない。
もう負の感情しか無いわよね。
それなのに一緒に暮らそうなんて、残酷。
ミクが可哀相。
私は今度こそ、ミクには幸せになってほしい。
それは、私と一緒に暮らすことでは叶わない。
一緒に暮らしてやり直したいなんて私のエゴ。
親のエゴで犠牲になるのはいつも子供。
これ以上ミクを被害者にしたくない。
その思いをお母さんに伝える前に、面会時間が終わってしまった。
「又来るから、よく考え直しなさい」
そう言い放ちハンカチで涙を拭うと、立ち上がりすぐ背を向けた。目の前の後ろ髪とコートは、雪が溶けて出来た水滴がすっかり渇いている。
お母さんは小走りで行ってしまった。
その背中が見えなくなるまで見詰めていた。
気分が沈んでしまい、体まで重くなったみたいで……中々立つことが出来ず、座り込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!