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鬱々と作業時間を過ごし、夕食時間になる。
目の前のフライや野菜の和え物の匂いが鼻孔を擽る。
タクと暮らしていた頃よりは質の良い食事を採れる。食事時間は、娯楽が少ない囚人には楽しみの一つ。
私にとっても食事の時間は楽しみな時間ではあるが……今は、食欲が無い。珍しく胃袋が何の主張もしない。
それでも、夕食を口に入れて胃を満たす。味わったりもせず、ただ、食べた。
そんな私に時々冷たい視線が向けられる。
食べ物が喉を通りづらくなる。
何とか食事を終えると、私は雑居房に戻った。
何もする気になれない。いつもみたいに部屋の隅で膝を抱えて座り込んみ、俯いた。
今日面会に来てくれたお母さんの泣きそうな顔が脳裏に浮かぶ。
「ねぇ」
誰かが声を掛けてきた。
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