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「当たり前だろ!お前みたいに娘や息子を見捨てなんかしない。二人に会ってちゃんと謝るし、償うさ。お前なんかと違ってね」
そう言いながら私を見る目は、憎い相手を見る目だ。
その目に怯まず、問う。
「償うって、どうやってですか?」
私や絵里子さんより遥かに年上の千鶴だから、娘息子ももう成人している。
故に『育児』はもう必要無い。
「まずは二人に会って、謝って、一緒に暮らして私は二人の為にだけ生きるさ。お前見たいに自分の産んだ子を見捨てなんかはしないね」
「見捨てるのは、貴女ではなく娘、息子さんじゃないですか?」
それを聞いた途端、凄い剣幕で睨んできた。これは想定内だが、やはり睨まれると、怖い。
でも、言い続ける。
「娘さんも息子さんも、面会に来てくれないって前に言ってましたよね。それは二人共、千鶴さんに会いたくないからじゃないでしょうか?
千鶴さんのせいで人生を台なしにされたんだし、恨まれても仕方ない、ですよ……。
それなのに……千鶴さんは、会うのですか?一緒に暮らすのですか?
それって……ただのエゴじゃありませんか?」
「てめぇ!」
キレた千鶴が立ち上がり、殴りかかるが絵里子さんが必死で止める。
「ちょ……!騒ぎ起こしたら減点されますよ」
絵里子さんの言葉を聞き、何とか殴りかかるのを止めたが、息を荒くして私を睨む。
千鶴は短気だ。こんな短気なのによく詐欺師なんて出来たなぁ、なんて時々思う。
詐欺師って頭脳明晰なイメージがあったが千鶴にはそんなイメージが全くない。
まぁ詐欺師にも色々居るわよね。
確実なのは卑劣だって事。
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