サトミ  私に出来ること

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 あんなにも『会いたい』って思って心を弾ませていたのに、いざ会うと、気を使って疲れる。  ちゃんと前もって何を話すか考えなかった私の段取りミス。  取り敢えず、再び笑顔を浮かべた。  不自然だろうな、この笑顔。  さっきミクちゃんが見詰めていた窓を見た。  雪が降っているからだろう、まだ三時前だが薄暗い。 「雪降ってるね~」  何か話そうとして出た言葉。会話に困るとそんな事しか話せなくなる。話し上手な人が羨ましいな。  当然、ミクちゃんからは返事が無い。  今日は朋代さんはお見舞いに来れないのかな?  聞いた感じだとタクさん達は来なさそうだし……。  病室で一人じゃ、淋しいよね?  私なんかでも居た方がミクちゃんの為になるかな?  いや、むしろ邪魔だったりして……。  ……そうだ!  私は歩きだし、病室の隅にあるロッカーを開けた。家族以外の私が勝手に開けるのは悪いかもしれないと気は引けたが、取り出したい物があった。  鍵付きではないから簡単に開く。中にはオムツ等があり、お目立て商品は奥にあった。  前、まだミクちゃんが目を覚ます前に買った絵本。  表紙に折れ目が付いているが、気にしないでおこう。 「ミクちゃん、この絵本、読む?」  絵本をミクちゃんに向けて、聞いてみた。  暫く考えて、コクンと小さく、頷いてくれた。  それがとても、嬉しかった。
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