サトミ  私に出来ること

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「本を読んでいる時に悪いけど、熱を計らせて下さい」  体温計を手にして看護師さんが言った。  そっか、検温の時間なんだ。  私は邪魔にならないように、立ち上がってベッドから離れた。  ずっとしゃがみ込んでいたからか足が痺れたように痛い。壁にもたれ、背中に体重を預けて足への負担を少なくしようとした。  ピピピと電子音が鳴る。音に気付いた看護師さんがミクちゃんから体温計を取り、書き込んでいる。 「あの、熱、大丈夫ですか?」 「そうですね……ちょっと高めですが心配することないですよ」 「ありがとうございます」  看護師さんにお礼を言って、「ミクちゃんを宜しくお願いします」とも言おうとしたが、家族以外の私が「宜しく」と言うのも何だがおこがましい気がして止めた。  看護師さんが出た後、さっきの絵本の続きを読んだ。  読み終えると、再び室内が沈黙に包まれる。  何か話さなきゃと思えば思う程、あせって言葉が浮かばなくなる。  大人同士とかだと、こんな沈黙は気まずくなってしまうが、ミクちゃんの年齢でも、この『気まずさ』を感じるのかな……?  窓の外はもう暗くなっていた。  時計を見たら四時をもう過ぎている。夕飯の支度とかもあるしそろそろ帰らなきゃ……。
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