サトミ  私に出来ること

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 暫く間を開けて、トモヤが言った。 「何て言うかさ……。他所の家庭の事に、深入りし過ぎるんじゃね?」  その言葉が胸に突き刺さる。弱った心が痛む。 「じゃあ、何?ミクちゃんの事ばかり気にかけて、夕御飯もロクに用意出来ない様ならもうミクちゃんに関わるなって言いたいの!?」  苛立って、声を荒げてしまった。目の前のトモヤが驚いた顔になる。それを見た私は瞬時に申し訳なくなり、視線を下げる。  俯いて、目の前の食べかけカレーが目に映った。レトルトの、カレー……。 「……ごめん、大声なんか出しちゃって……。  確かに、私はミクちゃんを気にするばかり、家の事が疎かになってるよね。  ごめんなさい。それは反省してる。でもね、ミクちゃんは、母親のアヤサさんは刑務所だし、父親のタクさん達にも見捨てられ、唯一看てくれる朋代さんだって忙しくて、中々見舞いに行けない状態だし……。だから、せめて私が、『救えなかった』私が、ミクちゃんに出来る限りの事をしたいの」  この考えがお節介であり、差し出がましい事も、でしゃばりである事も重々承知。  私は俯いて、トモヤの顔が見れないまま冷めてしまったカレーを見つめていた。
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