サトミ  私に出来ること

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 着信音で、鳴っているのが私の携帯電話だと分かる。メールではない。電話だ。  慌てて立ち上がり、音が鳴る方に向かう。  私は携帯電話の置き場所なんて決めていないから、よく見失ってしまう。  バッグの中から鳴っているのを見つけ、すぐ取り出しディスプレイを確認した。  着信は朋代さんからだ。 「はい、もしもし」 『小堺ですけどこんばんは。サトミさんですよね?」  名乗らなくても名前が表示されるから分かるんだけどね。  そう思いながらも電話に答えた。 「はい、そうですよ。こんばんは」 『今日、ミクの事で病院に電話したら、お見舞いに来てくれた人がいて絵本を読んでもらってたと聞いたので……。サトミさんですか?』 「はい、今日時間があったので行きましたので……。あの、その絵本なんですけど、ごめんなさい。ロッカーを勝手に開けて出したんです」  あの時絵本を取り出す為とはいえ、勝手にロッカーを開けてしまった行為は失礼だし、気掛かりだったので今謝った。 『いえ、別にいいんですよ。ミクは絵本を読んでもらえて嬉しかっただろうから』  優しい声でそう返してくれた。  そう言ってもらえて少しだけ心が軽くなった。
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