サトミ  私に出来ること

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 わざわざお礼に電話をくれたのかな?律儀だなぁ。  そうだ、今、ミクちゃんはいつ頃退院するか聞こうかな?  そしてこれからミクちゃんはどうするのか……って、これが駄目なのよね。  詮索してるみたいで気分を害してしまうわよね。 『あの、ミクは脳等に後遺症も無いみたいで来月……来年になっちゃうけど無事退院出来るのよ。お正月は病院で過ごしてしまうけどね』  気になっていた事を、聞かなくても朋代さんから話してくれた。   「そうですか。安心しました」 『お医者様が言ってたけど、怪我よりも心のケアが必要みたい』  それは何となく察していた。つい、「何か私に出来る事があればします」とか言いそうになったが、ついさっきトモヤと話していたから、何も言えなかった。  ただでさえ、今は年末年始で忙しかったりする時期だから、力になりたい。  けど、そんな時期だからこそ、気を使わせてしまいそう……。  返す言葉を失っていた私に、朋代さんが沈んだ声で言った。 『あの……ミクなんだけど、この前面会に行ったら、アヤサが育てられないと……言ったのよ。その……養子に出すって……』  途切れ途切れに語られた。声が震えていた。朋代さんは泣いてるのかもしれない。  私は『養子』という言葉を耳にして、凍りついたみたいに……携帯電話を耳に当てたまま固まってしまった。
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