サトミ  私に出来ること

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「今の電話――まさか、ミクちゃんに何かあったのか?」  私が呆然としているから、トモヤを心配させてしまったみたい。  私は静かに首を横に振った。 「ううん、何でも……ないよ」  そう言うのと同時に立ち上がり、台所に向かうと食器を片付けた。食べかけのカレーは、今は食べる気にはならないからラップをかけ、冷蔵庫に仕舞う。食べかけの食品は菌が繁殖するって聞いたけど、明日の朝に食べるのなら大丈夫よね?棄てるのは勿体ないし……。  「何でもない」か。  食器を洗いながらさっきトモヤに言った言葉を思い出す。  何でもない、関係ない、関わらない、他人事。  だから悩むだけ無駄。  そう割り切らなきゃいけないかも。  私は私の事をしっかりしなきゃ。  トモヤの優しさに甘えて迷惑掛けたままはいけないし。  ……でも、関わらないようにしようとしても、心配してしまう気持ちはどうしようもなかった。  食器を洗い終え、再びソファーに座る。トモヤとはあまり会話をしないまま。  トモヤと喧嘩したわけじゃないのに、少し気まずい雰囲気のせいでいつもより早い就寝になった。
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