アヤサ  新年

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「アヤサ……前の話し何だけど」  ミクの事だ。  気まずさというか、申し訳ない気持ちで何も言えず、ゴクリと唾を飲んだ。  そんな私を見てだろうか。 「その前に良いお知らせしなきゃね」  笑顔を作り話題を変えてくれた。 「ミクがもうすぐ退院出来るんだけど、お父さんも近々退院できるのよ」  それを聞き、顔を上げて再びお母さんを見た。  優しく微笑んでいる。 「……お父さん、もう大丈夫なの?」  やっと喋った私を見て、ただ頷くお母さん。 「良かった……」  お父さんが入院したのは私にも原因があった。  事故って、怪我をしたり精神的にも肉体的にも、経済的にも大変になった時に私が虐待で逮捕され、更に追い詰めてしまった。  私は喜ぶ資格なんて無いかもしれないが、それでも嬉しかった。  喜びが表情に出たのかもしれない。私を見てお母さんが、優しい表情のまま言った。 「だからね、ミクの事は大丈夫よ。お父さんも居るし、ちゃんと看てあげれるから」  私を安心させるように、優しく言った。  それを聞いて、お母さんの温かな表情とは反対に、私の顔から笑みが消えていくのが自分で分かった。
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