アヤサ  新年

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「アヤサ……。養子の事なんて向こうには話してないでしょ?ミクにも聞かなきゃならないけど、タクさんにも聞かなきゃいけないんじゃない?」  あ、タクね。頭の片隅にも無かった。 「別に話さなくても良いわよ。押し付けるように親権を私に譲ったんだから。……いや、私より先に親権を放棄したんだ。  あんな奴等に連絡なんかしなくていいよ。  反対もしないだろうし」  私は怒りからかキツイ口調になっていた。  タクも今だに許せないが、今はタク以上にタクの親父が憎い。  ……お母さんが、ミクの養子の事でアイツ等に連絡するのが嫌だ。  本来なら私がするべきだろうが会うことなんて出来ないし、もう奴等は面会に来ないだろう。 「そうゆう訳にも行かないわよ。ミクの病院代の他、養育費だって貰っているのだから……」  黙ってくすねちゃいなよと言いたいが、看守も居るのに言えるわけがない。  変な事を言ってイメージが悪くなると、私達囚人は不利だ。 「分かった。私が手紙で知らせるよ」  面倒臭げに言うと、お母さんは再び真剣な顔になり言った。 「知らせるのは、ちゃんとミクに聞いてから。ミクが先よ」  私は何も言えず、ただ、頷いた。 「……もっと話したいけど、病院も行かなきゃならないから帰るわね。  ……元気でね」  そう言い、席を立つお母さん。 「ありがとう……気をつけてね……」  本当はもっと感謝の気持ちとか、謝罪の気持ちとかも言いたかったが、出た言葉はこれだけだった。
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