サトミ  お見舞い

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 私は何も言えないまま、ただ目の前のミクちゃんを見つめた。  朋代さんの気持ちは痛い程分かる。……いや、子供がまだいない私には分からない気持ちだろうな。  大切な孫と離れてしまうかもしれない、そんな断腸の思い。  養子に出してほしくない。  私も……同じく思う。  ミクちゃんはアヤサさんと……大好きなママと一緒に暮らして、笑顔を取り戻してほしい。  でも、そんな事、他人の私が口出しする事じゃない。 「……これからね、ミクに聞こうと思うの。  アヤサと暮らしたいか、暮らしたくないか」  小さな声が、震えていた。  カタッと音を立てて、朋代さんは立ち上がりベッドの傍、ミクちゃんの頭の方に寄る。  愛おしそうにミクちゃんを見つめると、そっと髪を撫でた。
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