サトミ  お見舞い

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 朋代さんも笑顔で、ミクちゃんの傍に寄る。 「あら、ミク。起きたのね。  そうだ、サトミさんがね、クッキーを持ってきてくれたのよ。後で頂きましょうね」  そう言って、クッキーを取り出しミクちゃんに見せる。  だけど、やはりぎこちない……朋代さんも動揺してるんだろうな。   「あの……えっとね、ミク。これから大切な、話があるの」  朋代さんがそう言うと、クッキーをミクちゃんの横に置く。   「えっとまず……ミク、もう少しで退院出来るよ。この病院から帰る事が出来るの。  でもね……あのマンションには、帰れないの」  まだ幼いミクちゃんが理解できるように、傷付かないように、言葉を選びながら、ゆっくり、優しく話す朋代さん。  ミクちゃんは、両親の離婚、母親の逮捕などをまだ知らない。  それを今から、知らせるのよね……。  悲しい、よね……。  ミクちゃんの心情を思うと泣きそうになった。  辛いのはミクちゃんなのだから、泣いては、いけない。  今ここで私が泣いたり、悲しい顔をしたら余計ミクちゃんを悲しませる。  私は悲しみと涙をぐっと堪えた。
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