サトミ  お見舞い

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「ミク……退院してもね……この病院から帰ってもね、直ぐにパパとママに会うことが、出来ないの。  えっとね……パパも、ママも、遠い所に行って、会うのが難しいの」  朋代さんは『逮捕』や『離婚』という言葉を使わなかった。  たぶん、理解できないからって理由より、ミクちゃんを傷付けない言葉を懸命に選んでるのだと思う。 「ねえミク、大事な、大事な事を、これから決めてほしいの……。  すぐには会えないけど、ミクは、ママと一緒に暮らしたい?」  本題に入り、朋代さんは表情を曇らせた。  ミクちゃんの出す答えで今後が大きく変わる。  大事な選択だ。 「あの、ママはね、ミクに酷い事をしたって反省してるの。もうママは、あんな酷い事はしないよ。  だからママを許してあげれるかな?  パパはもう、一緒に暮らせないけど、ママと、一緒に暮らすこと、出来るかな?」  ミクちゃんの小さな手を掴み、必死に語る。朋代さんとしては、ミクちゃんにはアヤサさんと一緒に暮らすと答えてほしいんだろうな。  だから、アヤサさんが反省した事を強く話す。  もう、ミクちゃんを虐待したアヤサさんではない事を懸命に話す。  でも、朋代さんは何かに気付いたみたいにハッとして、ミクちゃんの手を離した。 「……ごめんね、ミク。  選ぶのはミク。その答えを誘導しちゃダメよね。  ……でも、アヤサが……ママが反省してる事……後悔してる事を、分かってほしかったの。  ……もう一度聞くね。  ……ママとまた一緒に、暮らしたい?」
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