サトミ  お見舞い

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『あの後も、これからどうしたいか……アヤサと暮らしたいかどうか、聞いたけど、答えてくれなかったわ。  簡単に決められる事ではないけど、すぐ答えられないって事は……アヤサの事を拒否する心があるって事よね……』  …………。   私は何て言ったら良いか、言葉が浮かばず黙ってしまった。 『七日に退院だから、それまでに決めて、とは言ったのだけど……。私もどうしていいのか分からないのよ。私としては、アヤサと暮らして欲しいんだけどね……』 「そう……ですよね……」  朋代さんの声は元気が無く、顔が見えなくても悲しげな……辛そうな表情であることが想像出来た。  それなのに、利く言葉が浮かばない。そんな自分が憎くなった。  退院の日を知った私は、お祝いをしたいから会いたいと伝えたら、快く承諾してくれた。  朋代さんが心労してる時に、お祝いをしたいから会いたいと言う自分は配慮の無い人間に思えたが、こんな私にも朋代さんは「ありがとう」と言ってくれた。  お礼が言いたいのは私の方なのに。  ミクちゃんとアヤサさんの事で大変だろうから、会話を切り上げて電話を切った。  七日に……ミクちゃんが退院する。会う事が出来る。  でも、素直には喜べなかった。
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