サトミ  運命の決断

12/18
前へ
/1109ページ
次へ
 水を飲み、コップを置くとカタンと音がした。  そっと置いたし、大きな音を立てた訳でないのに音が目立ったのは、注文をした後誰も話さないから。  音楽に疎い私には歌手が誰だか解らないBGMと、周りの客の談笑が聞こえる。  沈黙のままでいると、先程のウェイトレスが珈琲を運んできた。 「お待たせしましたぁ~。プリンアラモードはハンバーグランチと一緒で宜しいですか~?」  出来れば珈琲と一緒に出して欲しかった。  何で注文時に確認してくれなかったんだろ……。  そう思いながらも文句は言わないで「はい」と返事しておいた。  ウェイトレスさんが去った後、三つ並んだ珈琲を見つめ、やっと朋代さんが口を開いた。 「オレンジジュースも注文したら良かったわね」 「あっ、すみません……私がハンバーグランチを注文しなければプリンアラモードも一緒だったのに……」 「いえいえ、こちらこそ付き合わせた上に気を使わせて注文させちゃってごめんなさいね」  朋代さんは、私が気まずくて注文したのが判ってたんだ。 「あの店員露骨に顔変えたしな」  旦那さんがボソッとそう言うと、私と朋代さんはプッと笑った。  ……でも、やはりミクちゃんは笑わない。  そんなミクちゃんを見て、朋代さんは真剣な顔になりミクちゃんの方を向いたまま言う。 「ミク……あのね、大事な話をしたいの……。前にも話した事だけど……決まった?  アヤサと……ママと、暮らしたいか」  やっと本題を切り出した。
/1109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25567人が本棚に入れています
本棚に追加