サトミ  運命の決断

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 それを見てオロオロとする朋代さん。  深く溜息を吐き、ガクリとする旦那さん……。 「え?ミク?……えっ?  もう……一緒は嫌なの?違うでしょ?ママと一緒に居たいわよ……ねっ?  ……直ぐには一緒にはなれないけど、ママが帰ってきたら、一緒に暮らそ?嫌?待てない?」  説得させるように、必死に言う。でも混乱しているのか言葉が支離滅裂になっている。  朋代さんの傷だらけの手がミクちゃんの小さな手を握る。 「ママが此処に居ないから?ママが来ないから?……ミクに会いに来ない訳じゃないの……。そのね……来れないの。  本当はママは、ミクに会いたがっているのよ。  ……でも、会えないの。  難しいけど分かってあげて。アヤサは……」 「もう止めろ」  ミクちゃんに必死に話す朋代さんの肩を掴み、旦那さんが止めた。 「だって……」  涙を浮かべ、朋代さんは旦那さんの方を向いた。  旦那さんは、静かに首を横に振る。 「ミクは……決めたんだ。  その決断を覆したらいけない……」  最後の方は声が小さくなっていた。  旦那さんも、この結果を聞いて悲んでいる。  私は初めは驚いたけど、驚きは次第に悲しみへと変わっていった。  だって……私は、ミクちゃんはアヤサさんと暮らしたがっていると思い込んでいたから。  ほら、幼い子は親に酷い仕打ちをされても、懸命に、親の愛を求めてるってよく聞くし……。  だから、ミクちゃんも、まだアヤサさんん求めていると思い込んでいた。  だから、アヤサさんが釈放されたら又二人はやり直すのだと思った。  でも現実は違った。  ミクちゃんはアヤサさんと一緒になる事を拒否した。  朋代さんは涙を堪えて俯いた。旦那さんは眉間に深い皺を刻み、苦渋の表情を浮かべた。  この席だけ、重苦しい空気に包まれている。  そんな時―― 「お待たせしましたぁ~。  ハンバーグランチとプリンアラモードで~す」  雰囲気をぶち壊すような明るい声で、先程のウェイトレスさんが注文の品を運んできた。
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