サトミ  運命の決断

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 ウェイトレスさんがテーブルにハンバーグランチとプリンアラモードを並べる。  目の前に来たハンバーグランチの匂いが鼻腔を刺激する。なのに食欲は出ないまま……。  この席の皆が、沈んだ顔をして暗いオーラを纏っているだろう。  にも関わらずウェイトレスさんは明るい声で言った。 「お嬢ちゃん、まだ小さいのに大人しくしてて偉いわね~」  ……褒めてくれた。  暗い空気に気を使って明るくしようとしてくれたのかな……?  いや、ただ単に、思った事を言ったのだろうか……。  何となく後者だと思う。  折角ミクちゃんを褒めてくれたのに、誰も、何も言わないまま。  にも関わらず、「それでは、ごゆっくりどうぞ~」と明るい声で言うと、ウェイトレスさんは去った。   「……」 「……」  再び沈黙の時が流れる。  テーブルの上の珈琲に、誰も手を付けない。  私も、運ばれてきてまだ湯気が立ってるハンバーグランチに手を付けていない。  美味しそう、とは思うが食べる気になれない。  丸々残したら、折角作ってくれた人に悪いしなぁ……。  私は食べ物を粗末にする事に罪悪感を感じてしまう人間だ。  それより……。  誰も、喋らない、飲まない、食べないままだとミクちゃんも、プリンアラモードを食べづらいよね……。  私は少しの勇気を出して沈黙を破った。 「ミクちゃん、プリン食べよ」  そう言って笑ってみたが、先程のウェイトレスさんみたいな笑顔は作れなかった。
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