アヤサ  懐妊

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 私は堕胎を決めた。産める筈が無いから。感じたのは深い深い、絶望感……。正直、中絶に罪悪感は無かった。 ――タクには黙っておこう――  そう、心に決めて堕胎を決断した。  問題は、中絶手術だ。貯金はある程度はしていたが中絶費用に出来るほどの金額では無い。しかし、タクには言えない……。  親にも言えない。  友達にも言えない。  私は孤独感と絶望から部屋で一人泣いた。ベッドに顔を埋めて。シーツが次第に涙で濡れる。  泣きながら憎んだ。タクを。タク以上に自分を。そして……  自分以上に出来てしまった子供を。  携帯電話の着信音が聞こえた。タクからの電話だ。早く出ないと怒られるから仕方がなく電話に出た。  泣いてる事は隠したかったが嗚咽が止まらなかったので泣いてる事がバレた。驚くタク。 『おい……何泣いてる?どうしたんだよ!!』  怒鳴るタク。私を心配してくれてるのか……?まさかね。  涙の原因はお前だよ。言える筈なんて無いから、心の中で毒づく。  声が憎い。  タクの声を耳にしたら思考が変わった……。言わなきゃいけない。言わなきゃ繰り返されると思った。  こんな思いを繰り返すなんて、絶対に嫌だ……。繰り返さない為に、私は恐る恐る、タクに妊娠の事実を話した……。
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