第1章 桜館

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「まあ、部屋はどこでもいいけど、あまり2階の部屋は使わないでくれ。まだ片付いていない」 床にどかっと荷物を置きながら、河俣が言った。 「ところでさあ」 ふと、二人の女性部員の内の1人である甲斐千春(かいちはる)が口を開いた。 「何で河俣君はこんな館を知ってんの?」 「ああ。それは、曾祖父が某銀行の社長で、明治――いや、昭和初期にこの《桜館》を建てたんだ。でも、曾祖父が死んで祖父の代になった時、当時の《桜館》が炎上してしまったんだ。で、その(桜館)跡地から今の場所に移動して建てられたのが今いる《桜館》なんだ。 で、その祖父が死んで、父の代になり、父が交通事故で死んで、僕のものになったんだ」
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