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緩い坂道を登って行くと、その上に《桜館》があった。古ぼけた屋敷で、全面を深い黒一色に染めている。その為か、周囲の闇に溶け込んで不気味な雰囲気を醸し出していた。
ぶるりと、思わず身体が震える。他の二人も、じっとその館を見つめていた。
「……行くぞ」
静かに、しかしはっきりとした口調でよっちゃんが言った。ゴクリと誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
正面玄関の鍵は開いていた。その、鉄製の古びた扉を開けると、ぎいいいいっと嫌な音が響いた。
いつの間にか、外は雨が降り始めた。館内には、ザアアッと雨が館の屋根に降る音しか聞こえない。
中は暗闇に染まっていた。何があるのか、さっぱり分からない。
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