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「――…っ」
目が、覚めた。
しかし、すぐに動き出す事は 出来なかった。
夢を見たのだ。
「……」
また、あの夢を。
―――カタン。
少年は、寝起きで気だるい腕 を上げて、すぐ手前の窓際に 置かれた時計に手を伸ばした 。
「―――まだ5時だ、」
確認した時刻は明け方。
一日の始まりには少々早すぎ る起床である。
次に、視線をカーテンへと移 す。
外は真っ暗ではないにしろ、 まだまだ早朝の闇に包まれて いる様子だった。
(…そろそろ日が昇る頃かな)
ゆるゆると身体を起こす。
夢見が悪かったせいで汗で湿 った寝間着が気持ち悪い。
額に掻いていた汗を袖口でグ イッと拭うと、寝る前に閉め た窓のカーテンを開けた。
「…ぁ」
少年・天羽尚也は軽く目を見 開いた。
窓の外に、尚也の好きな藍色 の空が広がっていたから。
―――キンと、静かに澄んだ 空…。
「‥早く起きて、正解だった かも」
カーテンだけじゃなく思いっ きり窓も開ける。すると間も なく、朝特有の匂いが鼻孔を 擽った。
少し肌寒い風が、少年の艶や かな黒髪を撫でていく。
ふ、と息を吐いた。
ようやく肩の力が抜けていく 。
ついさっきまで胸に渦巻いて いた不安が鎮まっていくのが 分かる。
「…今日も晴れそう」
嬉しくなって見上げた空には 雲一つ無い。
まだ薄暗いが、数時間後には 見事な快晴になるだろう。
尚也はそのまま夜が開けきる までの時間を、早朝の風と戯 れることにした。
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